夏休みシーズンに入り、観光地も賑わいを見せています。今では連休などに合わせての観光が主流ですが、昔はどうだったのでしょう? そもそも、日本の観光はいつ頃始まったのでしょうか?
2023年6月に発売された『図解でわかる 14歳から学ぶこれからの観光』(社会応援ネットワーク)には、私たちの住む地域の文化や歴史、自然などを観光資源として認識し、発信していくための知識が満載。ここでは、その一部を抜粋し、紹介していきます。(全6回)
今回は、日本の観光の歴史について。
日本の観光っていつから始まったの?
奈良時代には、貴族が花見や行楽のほか、温泉を訪ねた記録も残っていますが、平安時代後期になると「熊野信仰」が大流行しました。天皇から庶民にいたるまで、多くの人々が途切れることなく紀伊半島の熊野を参詣する様子は、「蟻の熊野詣」と言われるほどでした。
やがて室町時代になると、信仰の中心は熊野から伊勢神宮に移り、江戸時代に街道が整備されると、一般庶民の間で「お伊勢参り」が一気に広まりました。世の中が平定されると、信仰目的だけでなく途中の寄り道を楽しむなど、遊びの要素も加わった「観光」としての「お伊勢参り」や「こんぴら参り」が盛んに行われ、街道や宿場は大いに賑わいました。
そして明治維新で関所が廃止されると、人々の移動にも制限がなくなり、鉄道網の発達とともに本格的に観光旅行が全国に広まっていったのです。
東海道とお伊勢参り
江戸時代に東海道が整備され、江戸から伊勢までのおよそ500㎞を、1 日30~40㎞歩いて1カ月程度で往復。途中では寄り道や買い物を楽しんだようです。
信仰と旅
いつの時代も旅は信仰を中心に発達してきました。やがて時代は移り信仰対象も変化、次第に観光の色合いが強くなっていきます。
旅のスタイル(旅装束)の変遷
時代とともに旅の形態が変化し、目的も変わってきました。旅姿も、時代の特色が強く出たものから目的に応じたスタイルに変化していきました。
平安時代~江戸時代
昭和~現代
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本書では、観光に関する基礎知識から観光企画制作のアドバイスまで、観光に関わる情報を幅広くご紹介。中高生へのヒアリングをもとにした31個の質問から、「観光」をより身近に感じられる分かりやすい1冊となっています。『図解でわかる 14歳から学ぶこれからの観光』(社会応援ネットワーク)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、ごみ問題、気候変動などの環境課題の他、宗教や、資本主義、民主主義の歴史、心のケア、LGBTQ+など、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
全国の小中学生向けの『子ども応援便り』編集室が、2011年東日本大震災時、「メッセージ号外」を発行したのを機に設立。同時に文部科学省等から委託を受け、被災地に「子どもの心のケア」の出張授業や教職員向けの動画配布を行う。以降、全国の4、5、6年生全員に『防災手帳』を無料配布するなど、学校現場からの「今、これが必要」の声に徹底して応えるプロジェクトを展開。心のケア、防災、共生社会、SDGsの出張授業や教材作り、情報発信を続ける。コロナ禍では、「こころの健康サポート部」を立ち上げた。書籍に『図解でわかる 14歳からのLGBTQ+』(太田出版)など。