皆さんは、田んぼの中心にポツンと小さな森のようなものがあるのを見かけたことがありますか? そこは”鎮守の森”と呼ばれるもので、近づくと、中にお社が建てられているのが分かります。では何故、田んぼにそのようなものがあるのでしょう? そこには、弥生時代から続く日本人の信仰のルーツが隠されていました。
2023年6月に発売された『図解でわかる 14歳から知る日本人の宗教と文化』(山折哲雄・監修、インフォビジュアル研究所・著)には、「信じる」より「感じる」、そんなゆるやかな宗教の時代へ向かう、日本の宗教とこれからについてまとめられた記事が満載。ここでは、その一部を抜粋し、紹介していきます。(全6回)
稲わらのまじない
日本には、正月には稲わらで作った注連縄(しめなわ)を家の門や玄関に飾る風習があります。注連縄には悪いものが入ってこないようにする力があるといわれているので、正月に飾って一年の無事を祈るのです。
そのほか、昔の村境に縄を張ったり、藁人形を立てたり、縄で作った蛇を家の垣根などにつけておいたりと、稲わらを使う伝統の行事はたくさんあります。大事な食べ物の米を実らせる稲には、命の元になるような力があると感じられるからでしょう。それが遠い昔の弥生時代に始まりました。
稲作と村の祭り
1960年代の高度経済成長期にトラクターなどの農業機械や農薬・化学肥料が普及するまで、米づくりの多くの作業が人の手作業でした。田植えや稲刈りには多くの人手が必要でしたから、村の人々の共同作業で行われました。農村の小学校には秋休みがあり、子どもたちも稲刈りを手伝ったほどです。
その共同作業の基本的な単位は、祖先がつながっている親戚の一族でした。高度経済成長期に農村から都市へ働きに出たり、都市の学校に進学したりする人が増えて日本の農村は大きく変わりましたが、それまでの農村は実は弥生時代からそれほど変わっていないともいわれます。
その名ごりが、昔の村ごとに今もよく残っている鎮守の森です。今も収穫を祝う秋祭りは鎮守の神社の祭りであることが多く、村をつくってくれた遠い祖先に感謝する行事にもなっています。
* * *
本書では、成り立ちから現代まで、日本の宗教とそれに関する情報を幅広くご紹介。縄文から続く日本人の宗教と文化をたどる1冊となっています。『図解でわかる 14歳から知る日本人の宗教と文化』(山折哲雄・監修、インフォビジュアル研究所・著)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、ごみ問題、水資源、気候変動などのSDGsに関する課題や、地政学、資本主義、民主主義、心のケア、LGBTQ+などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。