エジプトで子孫を増やしたイスラエルの民は、エジプト王から弾圧されてしまいます。その状況を打開したのが指導者・モーセです。モーセは何十万ものイスラエルの民を引き連れエジプトを脱出し、目的地であるカナンを目前に生涯を閉じました。その後、後継者のヨシュアとともにイスラエルの民はカナンにたどり着きます。ここからイスラエル王国は隆盛を極めていくことになるのです。
2023年9月に発売された『図解でわかる 14歳から知るキリスト教』(山折哲雄・監修、インフォビジュアル研究所・著)では、世界最大の宗教・キリスト教を知るための情報が満載です。ここでは、その一部を抜粋し、紹介していきます。(全6回)
栄華から一転、捕らわれの時代も経験
モーセの後継者ヨシュアは征服したカナンの地を12部族に分配します(前回の記事を参照)。その後、士師と呼ばれる指導者が統治する時代を経へて、イスラエルが王政をしくようになったのは紀元前11世紀終盤のことでした。預言者サムエルによって選ばれた初代王サウル、イスラエル王国統一を果たした2代目の王ダビデと続き、「知恵の王」と称された3代目の王ソロモンの時代に王国は黄金期を迎えます。
しかし類いまれな英知を持ったソロモンでも妻たちが異教の神を祀ることを許すなどしたため、神から罰を受け、王の死後、王国は北のイスラエル王国と南のユダ王国とに分裂してしまったのでした。
国の分裂後、北のイスラエル王国は大国アッシリアの軍に攻めこまれ、紀元前722年に滅亡。一方、ユダ王国は、その後、台頭してきた新バビロニア王国に侵略され、紀元前586年に消滅し、人々は土地を追われ新バビロニアに連れ去られてしまいました。これをバビロン捕囚と呼び、紀元前539年、新バビロニアがアケメネス朝ペルシアによって滅ぼされるまで捕囚は続きます。
ペルシアの王によって解放された人々はユダのエルサレムに戻り神殿の再建、民族の再興に努め、唯一の神との契約に基づくユダヤ教の教義を確立させていきました。しかし、当時の地中海世界では覇権争いが絶えず、常に周辺国の支配下におかれるなかで人々は預言者たちが告げる「救世主(メシア)の到来」に未来への希望を抱くのでした。この救世主の存在が旧約聖書と新約聖書をつなぐ重要な要素となってきます。
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本書では、キリスト教の成り立ちから、宗教と戦争の関係、そこにこめられた各宗派の想いや歴史までを分かりやすくまとめています。「世界の宗教と文化」シリーズ第2弾『図解でわかる 14歳から知るキリスト教』(山折哲雄・監修、インフォビジュアル研究所・著)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、日本の宗教、ごみ問題、水資源、気候変動などのSDGsに関する課題や、地政学、資本主義、民主主義、心のケア、LGBTQ+などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。