21世紀も四半世紀を過ぎようとして、また世界は大きな変化のときを迎えているようです。これまで世界を主導してきたユーラシア大陸西側世界の近代科学思想、資本主義経済とその産業構造に限界が見えてきたからです。その限界は、地球環境の温暖化、地球規模の経済的不平等に顕著です。
そんな折、インドの人口が中国を超え世界1位となり、両国合わせて28億人を超えました。世界の人口の6割以上をユーラシア大陸の東側の人々が占める時代の到来です。この膨大な人口が、これからどのような豊かさを求めていくのか。大袈裟に言えば、これが人類の将来を決めることとなるでしょう。そのためにも、私たちは今一度、かつての豊かさを創ったオリエントの宗教を見直すときにきていると、言えるのではないでしょうか。
2024年1月に発売された『図解でわかる 14歳から知るインド・中国の宗教と文化』(山折哲雄・監修、インフォビジュアル研究所/大角修・著)には、古代インドと古代中国について分かりやすくまとめられた記事が満載。ここでは、その一部を抜粋し、紹介していきます。(全6回)
須弥山と4つの島
宇宙にそびえるスメールは、中国では漢字で書いて須弥山といい、日本に伝わりました。インド亜大陸は、北方の須弥山(ヒマラヤ山脈)以外の三方を海洋に囲まれています。この地形から、インド亜大陸は須弥山の南方にある大きな島であると考えられました。須弥山の山腹は青い瑠璃(ラピスラズリ)でできているので、その反射で空が青く見えるのだといいます。
この須弥山の周囲には、東西南北に大きな島があり、四大洲といいます。東方勝身洲、西方牛貨洲、南方贍部洲、北方倶盧洲です。そのうち南方の贍部洲(閻浮提ともいう)が人間が住む現実のインド世界ですが、その他の方角にも同じような世界があるといい、その全体がひとつの須弥山世界であると考えられました。
帝釈天と四天王
帝釈天はインドラという雷神で、アーリア人があがめた神です。アーリア人がインドの諸民族を征服するとともに、インドラは諸民族の神々の上に置かれ、須弥山の頂上に王宮をもつ神々の帝王とされました。帝王インドラは、この世界を守るために、須弥山の四方に神々の軍団を配置しました。
ドゥリターシュトゥラ(持国天)を将軍とする東方軍、ビルーパークシャ(広目天)の西方軍、ビルーダカ(増長天)の南方軍、バイシュラバナ(多聞天または毘沙門天)の北方軍です。これら天の神々の将軍を四天王といいます。この帝釈天と四天王のもとに、多くの神々がいました。
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本書では、世界史を創った2大文明の基礎である仏教/ヒンドゥー教/道教/儒教を古代までさかのぼり分かりやすくまとめています。「世界の宗教と文化」シリーズ第3弾『図解でわかる 14歳から知るキリスト教』(山折哲雄・監修、インフォビジュアル研究所/大角修・著)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、日本の宗教、ごみ問題、水資源、気候変動などのSDGsに関する課題や、地政学、資本主義、民主主義、心のケア、LGBTQ+などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。