2024年4月23日に発売された『図解でわかる 14歳から知る イスラム教』(山折哲雄・総監修、私市正年・監修、インフォビジュアル研究所・著)をOHTABOOKSTANDでは全6回にわたって、本書の一部を公開します。
戒律が厳しいという印象を持たれがちなイスラム教ですが、それは大きな誤解だったのかもしれません…。本書では「世界でイスラム教徒が増えている理由~じつは楽しく、優しい宗教だから?~」をコンセプトに、イスラム教について徹底解説しています。
第5回は、イスラム教徒の暮らしを紹介します。イスラム教と聞いて「断食」を思い浮かべる方は少なくないと思います。「断食」に対して厳しい印象を持ちがちですが、実は意外と楽しみもあったり…。その楽しみとは一体どのようなものなのでしょうか。「断食」の基本情報と合わせて解説していきます。
日の出から日没まで欲を断つ
ヒジュラ暦(イスラム暦)の第9月はラマダンと呼ばれます。
コーランには「コーランが下されたのは、ラマダンの月である。この月に在宅するものは、断食しなければならない」(2章185節)とあり、ラマダン月になると世界中のムスリムは、1カ月間の断食(サウム)を行います。この期間は断食だけでなく、嘘や悪口を慎み、善行に努めることも求められています。
断食は毎日、日の出から日没まで続き、水を飲むことも禁止。ただし、幼児や高齢者、病人などは免除されますし、どうしてもこの月に断食できない人は、寄付することで断食に替えることもできます。
断食明けの食事の楽しみ
断食には、食べ物への感謝の思いを新たにする、貧しい人の気持ちを理解する、欲に打ち勝ち精神力を養う、などさまざまな意義があるとされています。つらい修行のように思えますが、意外にもラマダンを楽しみにしているムスリムは多いもの。その理由のひとつは、断食明けのごちそうです。
日の出前に食事をとったあとは、ひたすら我慢。そのかわり日没になると、断食明けの食事がモスクでふるまわれたり、自宅で家族みんなでごちそうを囲んだりするため、断食月にはかえって太ってしまう人も。
さらに、1カ月の断食を終えると、イスラムの2大祝祭のひとつ、イード・アルフィトル(断食明けの祭り)が待っています。
家族や友人が集って、ごちそうを囲み、気持ちを新たにする。ちょうど日本の正月にも似た晴れの日なのです。
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本書ではイスラム教徒の暮らしと文化、その教えから経済事情まで、最新情報を起源とともにわかりやすくまとめられた記事が満載です。「世界の宗教と文化」シリーズ第4弾『図解でわかる 14歳から知る イスラム教』(山折哲雄・総監修、私市正年・監修、インフォビジュアル研究所・著)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、日本の宗教、ごみ問題、水資源、気候変動などのSDGsに関する課題や、地政学、資本主義、民主主義、心のケア、LGBTQ+などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。