「エレベーターで地震にあったら?」「ペットも避難所に連れて行っていい?」こんな時、どうしたらいいんだろう? 2月に発売された『図解でわかる 14歳からの自然災害と防災』では、日頃の備えから被災時の対応のしかたまで、身近で素朴な疑問に専門家がこたえる。Q&Aと図解イラストでやさしく解説されている本書から、一部を抜粋紹介します。今回は、自宅で避難中に断水してしまった時、トイレはどうすればいいのか。防災を“自分ごと”として、今一度考えてみませんか?
今や、日本の住宅の9割以上が水洗トイレです。地震や洪水で断水がおきると、流せないのでとても困ります。
そもそも、水洗トイレを1回流すのにどれだけの水量が必要でしょうか。1970年代は1回に約13ℓだった水量は改良が進み、2021年現在は約4ℓとなっています。それでも4人家族が一人1日5回流すと80ℓになります。
それだけの水の備蓄、しかも下水用の水となるとおふろの水を常に落とさずに残しておくことがトイレ対策としての有効な手段といえるでしょう。入浴後もバスタブの中の水はためておき、そうじは次におふろをわかす直前に行い、お湯を入れかえるという方法です。そうすれば、水洗トイレ用の水の常備はある程度クリアできます。ただし、浴槽にためておける容量は200ℓから400ℓ。ふだんと同じように流すと2、3日でなくなってしまいます。断水が長引けば次の方法も必要になってきます。
また、災害時の水の問題は断水だけではありません。地震では下水道*1がダメージを受け、流した汚お物ぶつがあふれたり、マンションなどでは下の階に流れたりすることもあります。洪水では下水道に外の水が入り込むことであふれることもあります。
*1 水洗トイレ使用後や洗濯後の水等の生活排水、工場で使う産業排水等を処理場に集約し、川や湖に戻す施設全般のこと。下水管や下水処理場等をさす。
そんな時は、水を流さずに、便座にポリ袋ぶくろをセットし、凝固剤などを入れて最後に袋の口をしばる方法があります。ただし、災害時はごみの回収が滞ることも予想されます。フタ付きゴミ箱など使用済みのポリ袋の保管方法なども合わせて考えておきましょう。
いくつかの段階を想定して、自分が耐えられる方法を考えておきましょう。
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このほか本書では、「マグニチュードと震度ってどう違うの?」「富士山って、噴火するの?」「障がいのあるきょうだいがいます」「自宅避難中に断水。トイレは?」「被災地を支援したい」など、中高生から特にリクエストの多かった質問に回答。『図解でわかる 14歳からの自然災害と防災』(社会応援ネットワーク・著、諏訪清二・監修)は、全国書店・通販サイトや電子書店で発売中。防災袋のそばに置いて、時々読み返してみては。なお、「図解でわかる~」は現在第19弾まで刊行する人気シリーズ図書。防災のほかに、ごみなどの環境問題、宇宙活動計画、LGBTQ+などを1冊1テーマに不定期刊行されています。
筆者について
全国の小中学生向けの『子ども応援便り』編集室が、2011年東日本大震災時、「メッセージ号外」を発行したのを機に設立。同時に文部科学省等から委託を受け、被災地に「子どもの心のケア」の出張授業や教職員向けの動画配布を行う。以降、全国の4、5、6年生全員に『防災手帳』を無料配布するなど、学校現場からの「今、これが必要」の声に徹底して応えるプロジェクトを展開。心のケア、防災、共生社会、SDGsの出張授業や教材作り、情報発信を続ける。コロナ禍では、「こころの健康サポート部」を立ち上げた。書籍に『図解でわかる 14歳からのLGBTQ+』(太田出版)など。