使い捨てマスクや手袋、フェイスシールドや消毒液など、2019年に発生した新型コロナの影響で生活必需品となったものは多いですよね。これらは、感染症の流行が下火になるにつれて、世界中でその必需性が問われています。自分たちを感染症から守るための対策。でも、使い捨てられたマスクがその後どうなるのかまで考えたことはありますか?
『図解でわかる 14歳から知るごみゼロ社会』では、詳細なデータをもとに、現在世界が抱えるごみの問題について分かりやすく解説しています。
今回は「医療ごみ」についての解説を一部ご紹介します。
増大する使い捨て医療ごみ
2019年に発生した新型コロナウイルス感染症は、瞬く間に世界中に広がり、いまも収束のめどがたっていません。このパンデミックによって増大しているのが、医療廃棄物です。しかも医療用具の多くは、使い捨てのプラスチック製であるため、プラスチック危機に拍車をかけています。
医療現場では、使い捨てのマスク、手袋、ガウンなどのごみが急増。最初に感染が拡大した中国の武漢市では、1日の医療廃棄物が6倍に膨れ上がり、その後、感染の広まった他の国々も同様の状況に陥りました。
2020年末頃から世界各国でワクチン接種が始まると、今度は大量の使用済み注射針や注射器などが廃棄されるようになりました。感染者数世界最多のアメリカでは、医療廃棄物の処理が追いつかなくなったり、ワクチンが供給過多となって大量廃棄されたりと、問題が相次ぎました。
もともと病院や医療研究施設などから出るごみは、血液や体液のついたもの、注射針やメスのように鋭利なものなど、取り扱いに注意を要するものが多く含まれます。特に、感染力のある病原体が付着したごみは、人間や自然環境に重大な危機をもたらしかねません。そのため、医療ごみは分別されて特別な処理が施されていますが、一般家庭で使用するマスクなどは、その限りではなく、時に自然界に流出します。
香港の海洋保護団体オーシャンズアジアによれば、2020年に海に流れ出したマスクは、推定15億6,000万枚。マスク素材の不織布はプラスチックの一種なので、海中に何百年も残り続けてしまいます。
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本書では、人々の文化の発展とごみの歴史、今考えるべきごみの問題、そしてこれからの課題についてわかりやすく解説しています。『図解でわかる 14歳から知るごみゼロ社会』(インフォビジュアル研究所)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。「図解でわかる14歳からの」シリーズは、現在第19弾まで刊行されている人気書籍です。ごみ問題のほか、水資源、気候変動などの環境課題、地政学、資本主義、宇宙開発、食料問題、LGBTQ+、防災などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。