例年夏になると暑さが増したと感じられる日本。勿論、暑さを感じているのは人間だけではありません。冷房設備などが整っていない分、自然に暮らす生き物たちは苦難を強いられています。
10月に発売された『図解でわかる 14歳から知る生物多様性』(インフォビジュアル研究所)では、地球だけがもつ奇跡の多様性を守るために、今わたしたちが知るべきことを分かりやすく解説しています。ここでは、その一部を抜粋し、紹介していきます。
今回は、地球温暖化が生物多様性に与える影響について。
3℃上昇で生物種の29%が絶滅
近年、桜の開花時期や渡り鳥の飛来時期が、以前より早まっています。地球の気温が上昇し、気候が変化しているためです。
地球温暖化は、人間の活動によって大気中の二酸化炭素が増えたことによるもので、現在の世界の平均気温は、産業革命前より約1℃上がっています。このまま何の対策もとらないと、2100年までに、さらに4℃以上も上昇すると推測されています。
温暖化の影響を真っ先に受けるのは、自然界の生きものたちです。気温が上昇すると、動植物は適温を求めて、北半球では南から北へ、あるいは低地から高地へと、生育地をずらしていきます。しかし、最北の地や高山に生息する生きものは、もう先へは進めず、生存を脅かされてしまいます。
北極の海氷の上で狩りをするホッキョクグマは、その一例です。温暖化によって海氷が減少しているため、十分な獲物がとれずに衰弱死する事例が報告されています。
また、オーストラリアでは、乾燥化による森林火災が頻発し、多数のコアラが犠牲になっています。海のなかでは、水温の上昇によって、世界各地のサンゴ礁が白化し、栄養不足に陥っています。
世界はいま、気温上昇を産業革命前に比べて1.5℃以内に抑えることを目指し、さまざまな対策を講じています。しかし、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次報告書によると、1.5℃の上昇でも、生物種の14%が絶滅してしまうといいます。さらに2℃上昇なら18%、3℃上昇なら29%の種が滅んでしまう恐れがある、と警鐘を鳴らしています。
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本書では、生物多様性の基礎知識や、生きものたちにしのび寄る危機、人類と生物の関係についてわかりやすく解説しています。『図解でわかる 14歳から知る生物多様性』(インフォビジュアル研究所)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、ごみ問題、水資源、気候変動などの環境課題、地政学、資本主義、民主主義、食料問題、LGBTQ+などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。