地中海東沿岸、なぜこの土地を中心に紛争が繰り広げられているのか…神とイスラエル民族の歴史を見ていくと、その理由が分かってきます。
2023年9月に発売された『図解でわかる 14歳から知るキリスト教』(山折哲雄・監修、インフォビジュアル研究所・著)では、世界最大の宗教・キリスト教を知るための情報が満載です。ここでは、その一部を抜粋し、紹介していきます。(全6回)
歴史や預言など多彩な文書で構成
神と古代の人々、とりわけイスラエルの民との交わりを描いた一大叙事詩ともいえる旧約聖書。「創世記」「出エジプト記」「申命記」など、この世の始まりから指導者モーセのもと、神と契約を結ぶまでが語られる「モーセ五書」や、「ヨシュア記」「士師記」「列王記」といった歴史書から、「イザヤ書」「エレミヤ書」「エゼキエル書」などの預言書、「詩編」や「箴言」「雅歌」など文学的な要素が強い文書まで、全部で39書により成り立っています。
その原文は古代イスラエルの言語のヘブライ語。ごく一部には中近東の共通語のアラム語が用いられています。書き手や書かれた年代などははっきりとはわかっていませんが、紀元前十数世紀以降、1,000年以上の長きにわたり、さまざまな者たちによって記された文書を編纂し、1世紀後半に成立したといわれています。
旧約聖書の主な舞台となっているのは、地中海東部の沿岸。エジプトからティグリス、ユーフラテスが流れるメソポタミアにかけての一帯です。なかでも地中海とヨルダン川、死海の間の地域は、「乳と蜜の流れる場所」(申命記6章3節など)として、神がイスラエルの民に与えると約束したカナンの地。イスラエル王国の興亡の歴史が展開され、旧約聖書においてとても重要な意味をもつ土地となっています。
このように古代イスラエルの歴史と深く関わっている旧約聖書はユダヤ教の聖典でもあります。ただし、旧約聖書とは呼ばれず、「タナハ」と称されていて、文書の配列も旧約聖書とは少し異なります。
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本書では、キリスト教の成り立ちから、宗教と戦争の関係、そこにこめられた各宗派の想いや歴史までを分かりやすくまとめています。「世界の宗教と文化」シリーズ第2弾『図解でわかる 14歳から知るキリスト教』(山折哲雄・監修、インフォビジュアル研究所・著)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、日本の宗教、ごみ問題、水資源、気候変動などのSDGsに関する課題や、地政学、資本主義、民主主義、心のケア、LGBTQ+などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。