2023年6月に公布された「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」(通称=LGBT法、LGBT理解増進法)。文字通り、性の区別に悩む人々に対する理解を深めるための法案です。皆さんは“LGBTQ+”についてどのようなイメージを持っていますか? LGBTQ+への理解を深めることで、LGBT法がどういったものなのかをより深く理解することができます。
2021年9月に発売された『図解でわかる 14歳からのLGBTQ+』(社会応援ネットワーク)では、LGBTQ+に関わる詳しい用語解説と、2021年時点でのLGBTQ+を取り巻く社会についてをまとめた記事が満載です。ここでは、その一部を抜粋し、紹介していきます。(全6回)
A.男・女で分ける考え方はだんだんと変わってきています。
私たちの社会では、生活のあらゆる場面で「男」「女」に分けられることがあります。人をそのどちらかに分類する考え方のことを「性別二元論」といいます。見た目(髪型、着る服の種類や色)、行動(言葉づかいや態度、コミュニケーションの取り方)なども「男」「女」のどちらかに当てはめられがちで、イメージから外れると「男らしくない」「女らしくない」と言われたりすることもあります。「外で仕事をするのはお父さん、家で家事をするのはお母さん」というようなイメージもそのひとつで、これらは、ジェンダー・ロール(性役割)と言われています。生まれた時の身体的特徴に基づいて割り当てられた性によって、期待される役割が決まってきてしまうのです。こうした考え方は「性別役割分担」とも呼ばれ、人々の意識の中に根強く残っています。
性別二元論から性の多様化へ
性別二元論に基づく考え方は近年、徐々に変化してきています。例えば、性別が持つ色のイメージです。ランドセルは、昔は、「男の子は黒・女の子は赤」というイメージが強く、その他の色はほとんど売られていませんでした。しかし、2021年の調査では、女の子のランドセルで最も購入された色は赤ではなく「紫・薄紫」でした。制服も、男女関係なくパンツスタイルが選べるものが登場しています。
大学で理系を選ぶ女性は1975年からの40年間で4倍に増え、仕事をする上でも、男女雇用機会均等法などの法律が整えられてきています。
「男らしく」「女らしく」から「私らしく」へ、少しずつ社会は変化しているのです。
このページのキーワード
【性別二元論】
性を「男」と「女」のどちらかに分類する考え方のこと。
【ジェンダー・ロール】
社会生活で性別によって固定的な役割を期待されること。例えば、「男は外で仕事をするべき」など。
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本書では他にも、LGBTQ+の考え方や当事者の方への接し方、彼らを取り巻く社会や世界の法律までを詳しくまとめています。『図解でわかる 14歳からのLGBTQ+』(社会応援ネットワーク・著)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、日本の宗教、ごみ問題、水資源、気候変動などのSDGsに関する課題や、地政学、資本主義、民主主義、心のケアなどなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
全国の小中学生向けの『子ども応援便り』編集室が、2011年東日本大震災時、「メッセージ号外」を発行したのを機に設立。同時に文部科学省等から委託を受け、被災地に「子どもの心のケア」の出張授業や教職員向けの動画配布を行う。以降、全国の4、5、6年生全員に『防災手帳』を無料配布するなど、学校現場からの「今、これが必要」の声に徹底して応えるプロジェクトを展開。心のケア、防災、共生社会、SDGsの出張授業や教材作り、情報発信を続ける。コロナ禍では、「こころの健康サポート部」を立ち上げた。書籍に『図解でわかる 14歳からのLGBTQ+』(太田出版)など。