1950年代に誕生し世界中に普及した原子力発電所。その存在が人々の生活を潤すものにも脅かすものにもなり得ることをわたしたちは知っています。では、原子力発電は稼働していてもいなくても大量の放射性ごみを発生させていることを知っていますか?
『図解でわかる 14歳から知るごみゼロ社会』では、詳細なデータをもとに、現在世界が抱えるごみの問題について分かりやすく解説しています。
今回は「放射性ごみ」についての解説を一部ご紹介します。
原発事故で放出した放射性物質
2011年3月11日、東日本大震災に伴い、福島第一原子力発電所事故が発生。原子炉内の核燃料が溶け出し、大量の放射性物質が放出されるという大惨事を引き起こしました。放射性物質は広範囲にわたって降り注ぎ、被災地の災害ごみも、住宅や農地も汚染され、膨大な量の放射性ごみが生じました。また、事故から10年以上経ったいまも、原子炉からは、高濃度の放射性物質を含んだ汚染水が流れ出し、貯蔵タンクを圧迫しています。福島第一原発は、すでに廃炉が決まっていますが、廃炉されれば、原発敷地内にあるものすべてが放射性ごみになり、敷地を再び利用できるようになるまで100年かかるともいわれています。
捨てる場所のない核のごみ
事故を起こさなくても、世界中の原発が絶えず放射性ごみを出し続けています。ウランを燃料にして発電したあとの使用済み核燃料は、放射能(放射線を出す能力)のレベルが最も高く、高レベル放射性廃棄物、通称「核のごみ」と呼ばれます。放射能が、人体に影響のないレベルまで弱まるには、数万年かかります。しかし、そのごみを捨てる場所は、まだ世界中のどこにもありません。原発が「トイレのないマンション」にたとえられるのは、そのためです。
現在、世界で唯一、核のごみの最終処分場を稼働させようとしているのがフィンランドです。通称「オンカロ」と呼ばれる施設の地下400~450mに、使用済み核燃料を10万年閉じこめるという計画で、2023年の操業開始予定に世界が注目しています。
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本書では、人々の文化の発展とごみの歴史、今考えるべきごみの問題、そしてこれからの課題についてわかりやすく解説しています。『図解でわかる 14歳から知るごみゼロ社会』(インフォビジュアル研究所)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。「図解でわかる14歳からの」シリーズは、現在第19弾まで刊行されている人気書籍です。ごみ問題のほか、水資源、気候変動などの環境課題、地政学、資本主義、宇宙開発、食料問題、LGBTQ+、防災などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。