「民主主義の危機」というフレーズを最近よく耳にしますが、そもそもどういう意味なのでしょうか。それが歓迎されざるべきことだとすれば、なぜなのかを私たちは明確に言葉にできるでしょうか。古代にすでに存在した民主主義の起源・基礎から、最先端のITとAIによるデジタル直接民主主義までをコンパクトな通史として俯瞰しつつ、これからの世代の民主主義の「あり方」を具体的に考えるための情報集がインフォビジュアル研究所・編『図解でわかる 14歳から考える民主主義』です。
ここでは、本書から一部をご紹介していきます。(全6回)
先進国の若者の高い投票率
政治に関心がないのは、世界中の若者に共通した特徴なのでしょうか。下のグラフは、主要先進国の20歳代(一部18・19歳を含む)の投票率を示したものです。これを見ると、若者の投票率が70%を超える国が少なくないことがわかります。
オーストラリアは、なんと97%。これは投票を義務化し、正当な理由もなく投票しない人には、罰金を科しているためです。同様にベルギー、シンガポールなどでも、罰則規定を設けて投票を義務化しているため、全世代の投票率が高くなっています。
一方、北欧諸国やイギリス、ドイツで若者の投票率が高いのは、政治教育の成果だと考えられています。
また、韓国では近年、若い世代の政治への関心が高まり、候補者も若者をとりこむ施策を打ち出す、という相乗効果によって、若者の投票率が伸びています。
投票で政治は変えられる
これらの国に比べると、日本の20歳代の投票率37%は、極めて低い数字であることがわかります。しかし、これは同時に、若い世代の投票率が上がれば、高齢者中心のシルバー民主主義から脱却する可能性が十分にあることを示しています。
ここでは、18歳から30歳代までを「若い世代」として試算してみましょう。もしこの世代の75%が選挙に行けば、若者票は2000万票以上となり、全得票数の30%を占めることができます。これだけの票があれば、日本の政治を大きく動かし、若い世代の声を反映させることが可能です。
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本書では、民主主義の誕生や歴史、これからの課題についてわかりやすく解説しています。『図解でわかる 14歳から考える民主主義』(インフォビジュアル研究所)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。なお、「図解でわかる14歳からの~」は現在第20弾まで刊行されている人気書籍シリーズ。ごみ問題、水資源、気候変動などの環境課題、地政学、資本主義、宇宙開発、食料問題、LGBTQ+などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。