荻窪メリーゴーランド
第1回

くちづけるとは渡しあうこと

文芸
スポンサーリンク

いまだかつてない盛り上がりを見せる現代短歌。その中でも最も注目すべき歌人・木下龍也と鈴木晴香による共演がOHTABOOKSTANDで実現!新進気鋭ふたりの新作短歌連載。言葉の魔術師たちが紡ぎ出す虚構のラブストーリー。ふたりが演じる彼らは誰なのか。どこにいるのか。そしてどんな結末を迎えるのか。第1回は「夏のデート」。

※外部配信では画面が崩れる場合があります。気になる方はOHTABOOKSTANDにてご確認ください。

君を撮るためのカメラがあたたまる太腿のうえ 海まで遠い

まぶたまで夏のひかりはしみとおりきみはるるぶでひさしをつくる

海よりも近くに君がいる夏は海を見ようとするだけでいい

「いつか海辺に住みたい」に「ね」を添えてふたりの夢をひとつ増やした

ここが窓、ここが玄関。砂浜の上のすみかで花火を待った

はみがきのまえにもできるキスとして(花火)マスクでマスクにふれる

(ひらくたび)ふたりふざけて切り合った髪の先端から火の匂い

ぼくの肩を頭置き場にしてきみは斜めの夜をご覧ください

はなびらを地球に落とさないように花火、消えてもまだそこにある

参列者めいたぼくらが砂浜で見上げる月は喪主めいている

きみが見た夜がわたしのものになるくちづけるとは渡しあうこと

おんぶして位置情報を重ね合いながらふわふわコンビニへゆく

火をつけてしまう以前の眩しさの去年から置き去りの手花火

湘南はきみを何回見たことがあるのだろうか 火が照らす膝

ふたりとも黙ってしまうそのあいだ海が喋っていてくれるから

帰りたくない、を書き足したくなるよ改札前のきみの台詞に

* * *

この続きは、8月18日(木)17時公開予定。

筆者について

きのした・たつや。1988年生まれ。歌人。 著書は『つむじ風、ここにあります』『きみを嫌いな奴はクズだよ』(ともに書肆侃侃房)、『天才による凡人のための短歌教室』『あなたのための短歌集』(ともにナナロク社)。また、共著に『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』『今日は誰にも愛されたかった』(ともにナナロク社)がある。

木下龍也 × 鈴木晴香

すずき・はるか。1982年東京都生まれ。歌人。慶應義塾大学文学部卒業。2011年、雑誌「ダ・ヴィンチ」『短歌ください』への投稿をきっかけに作歌を始める。歌集『夜にあやまってくれ』(書肆侃侃房)、『心がめあて』(左右社)。2019年パリ短歌イベント短歌賞にて在フランス日本国大使館賞受賞。塔短歌会編集委員。京都大学芸術と科学リエゾンライトユニット、『西瓜』所属。現代歌人集会理事。

  1. 第1回 : くちづけるとは渡しあうこと
  2. 第2回 : 〈永遠〉で終わらせるしりとり
  3. 第3回 : 恋に埋もれてうつむいている
  4. 第4回 : きみのこの世のまぶたを舐めた
  5. 第5回 : 夜がぼくらに手こずっている
  6. 第6回 : きみにはぼくを生きてほしくて
  7. 第7回 : 皮膚のぶんだけ遠いと思う
  8. 第8回 : 恋愛は羽で数えよ
  9. 第9回 : 妖精に生まれ変わるのはきみだろう
  10. 第10回 : おそろいのコップがひとつ欠けていて
  11. 第11回 : 二度目のはじめましてをしよう
  12. 最終回 : エピローグ
連載「荻窪メリーゴーランド」
  1. 第1回 : くちづけるとは渡しあうこと
  2. 第2回 : 〈永遠〉で終わらせるしりとり
  3. 第3回 : 恋に埋もれてうつむいている
  4. 第4回 : きみのこの世のまぶたを舐めた
  5. 第5回 : 夜がぼくらに手こずっている
  6. 第6回 : きみにはぼくを生きてほしくて
  7. 第7回 : 皮膚のぶんだけ遠いと思う
  8. 第8回 : 恋愛は羽で数えよ
  9. 第9回 : 妖精に生まれ変わるのはきみだろう
  10. 第10回 : おそろいのコップがひとつ欠けていて
  11. 第11回 : 二度目のはじめましてをしよう
  12. 最終回 : エピローグ
  13. 連載「荻窪メリーゴーランド」記事一覧
関連商品