近年、奨学金の返済が困難になり、生活に困窮する世代が問題になっています。とはいえ、希望する進学先をお金の問題で諦めるというのはとても残念ですよね。奨学金の仕組みを知ることで、リスクを減らすことができるかもしれません。
2023年1月に発売された『図解でわかる 14歳からの金融リテラシー』(社会応援ネットワーク)では、「円安」などの基礎的な金融用語から、投資の基本知識、お金のトラブル事例や対処法まで、私たちの生活に関わる「お金」の疑問に答え、図解で解説。ここでは、その一部を抜粋し、紹介していきます。
今回は、“奨学金”について。
A.給付型の奨学金もあります。まずは、どんな支援があるのか調べてみましょう!
奨学金とは、大学などでの学びに必要な学費や生活費のために、給付または貸与されるお金のことです。基本的には、本人が申し込みをし、条件にあてはまった場合に本人に対して給付または貸与されます。
一般に諸外国で奨学金と呼ばれるのは、給付型のもので原則返済する必要はありません。一方、日本では給付型はあるものの利用のハードルが高く、貸与型を受けている人がほとんどです。つまり、返済しなければならないので、奨学金ではなく「教育ローン」だといわれることもあります。
貸与型奨学金の返済は卒業後からで、借りた金額を一括で返済するのではなく、およそ10年程度をかけて分割して返していきます。利子が付いている場合はそれも含めて返していくので、将来の月々の収入額によっては、返すことが難しくなる場合もあります。その場合は、奨学金事業を行う団体と相談の上で、月々の返済額を減らしたり、返済を一旦ストップして返済期間を延ばしてもらうこともできます。
調査によると、2020年度に何らかの奨学金を受けている学生の割合は、大学で49.6%、短大で56.9%と、約半数にのぼっています※。奨学金も、国が行っているもののほかに、大学や地方自治体が行っているものや、民間の企業・団体が行っているものがあります。
奨学金は保護者や学校が受け取るものではなく、自分自身が申し込みをして受け取る、学ぶためのお金です。「お金がないから」とあきらめる前に、進学にはどのくらいのお金が必要で、どんな支援の仕組みがあるのか、自分はどれを利用できるのか、調べてみましょう。
※日本学生支援機構 令和2年度 学生生活調査結果
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【奨学金】
経済的に困窮した学生等に給付または貸与される資金のこと。学術研究を援助するために支給される奨学金もある。
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本書では、他にも「友だちからお金を貸して欲しいと頼まれた…」「私たちも税金を払っているの?」「クレジットカードって、何歳から作れるの?」など、具体的な相談内容を取り上げ解説。お子様だけでなく、大人にも読んでいただきたい一冊となっています。『図解でわかる 14歳からの金融リテラシー』(社会応援ネットワーク)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、ごみ問題、水資源、気候変動などの環境課題、地政学、資本主義、民主主義、心のケア、LGBTQ+などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
全国の小中学生向けの『子ども応援便り』編集室が、2011年東日本大震災時、「メッセージ号外」を発行したのを機に設立。同時に文部科学省等から委託を受け、被災地に「子どもの心のケア」の出張授業や教職員向けの動画配布を行う。以降、全国の4、5、6年生全員に『防災手帳』を無料配布するなど、学校現場からの「今、これが必要」の声に徹底して応えるプロジェクトを展開。心のケア、防災、共生社会、SDGsの出張授業や教材作り、情報発信を続ける。コロナ禍では、「こころの健康サポート部」を立ち上げた。書籍に『図解でわかる 14歳からのLGBTQ+』(太田出版)など。