“人が人を裁く仕組み”には長い歴史があり、様々な試行錯誤を経て現在に至っています。日本では2009年(平成21年)5月21日に、法の専門家ではない一般市民が審理に参加する裁判員裁判制度が施行され、2022年からは裁判員になれる年齢が18歳以上となりました。ある日突然自分が裁判員に選ばれたら──そんな時のために、裁判員制度の仕組みを詳しく学び、準備しておきたいですよね。
2023年2月に発売された『図解でわかる 14歳から知る裁判員裁判』(インフォビジュアル研究所)は、民主主義と裁判の深い関係や、裁判と裁判員制度の基礎知識、裁判員裁判シミュレーションなど、いざ自分が裁判員に選ばれた時にためになる知識が満載。ここでは、その一部を抜粋し、紹介していきます。
今回は、なぜ国民の基本的人権を守るために司法権が独立する必要があるのか、一緒に勉強しましょう。
三権分立と司法権の独立
個人の自由(基本的人権)を保障するためには、どのような国家の仕組みが必要でしょうか。どんなに国王が国民思いであっても、権力を独占する以上、国民の自由が奪われない保障はありません。
個人の自由を守るために国家の権力を分けることを説いたのが、18世紀の思想家モンテスキューです。モンテスキューは、国家の権力には立法権、行政権、司法権の3つがあるといいます。そして立法権と行政権を同じ人間あるいは団体で結合させると、自由は全く存在しない、また司法権が立法権や行政権と分離されないと、自由はやはり存在しない、といいます。
モンテスキューは、権力を3つに分けることだけを提案したわけではありません。第1に、三権それぞれを、特定の個人または団体に独占させるべきでないといいます。例えば司法権の裁判役は無作為抽選で選ばれるのが望ましいとされます。第2に、立法権を貴族代表と人民代表のように2つの権力に分けるべきであるといいます。第3に、行政権には立法権に対する拒否権を与えるべきとされます。モンテスキューは、3つの権力の間に、なるべく緊張関係を作って「不協和音」が出るようにして、個人の権利を守ろうとしたのです。
私たちの憲法も三権分立制度を採用し、立法権は国会に、行政権は内閣に、司法権は裁判所に帰属させました。またお互いに干渉させる制度を設けて緊張関係を作り出し、国民の自由を守ろうとしています。基本的人権を守るためには、司法権がその機能を十分に果たせることが不可欠なのです。
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本書では、裁判の基礎知識から裁判員裁判のシミュレーションまで、裁判員裁判に関わる情報を幅広くご紹介。人を裁くことへの向き合い方を学べる一冊となっています。『図解でわかる 14歳から知る裁判員裁判』(インフォビジュアル研究所)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、金融リテラシー、ごみ問題、水資源、気候変動などの環境課題、地政学、資本主義、民主主義、心のケア、LGBTQ+などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。