「わび・さび」という言葉を聞いたことがありますか? この言葉は”禅”の影響で生まれた美意識のことで、日本のみならず、海外でも知られています。では、”禅”とは、いったいどんなものなのでしょう?
2023年6月に発売された『図解でわかる 14歳から知る日本人の宗教と文化』(山折哲雄・監修、インフォビジュアル研究所・著)には、「信じる」より「感じる」、そんなゆるやかな宗教の時代へ向かう、日本の宗教とこれからについてまとめられた記事が満載。ここでは、その一部を抜粋し、紹介していきます。(全6回)
中華皇帝の仏法
インドで静かに思慮する行をディヤーナといい、漢訳して禅といいます。禅宗は5世紀後半にインド僧のボーディダルマ(達磨大師)が中国に伝えたとされますが、道教とも習合して中国独自の仏教になり、宋代(960~1279年)には皇帝の仏法として大寺院が建立されました。
禅宗は血脈と呼ばれる系図によって師から弟子へ伝えられます。その宋に渡って臨済宗の血脈を日本に伝えたのが栄西でした。鎌倉時代初期のことです。その後、栄西は鎌倉に寿福寺、京都に建仁寺を開きました。さらに幕府の執権北条氏が宋から来た禅僧を開山として鎌倉に建長寺、円覚寺を建立。それら禅宗の大寺院は、朝廷と貴族の権威を表すものでもあった京都や奈良の大寺院に対して、鎌倉幕府の権威を示すものとなりました。その後、各地を治めるようになった武家の大名も、それぞれの領に臨済宗の寺を建て、禅僧を師として仏道にかぎらず学問や漢詩を子弟に学ばせました。それが臨済宗諸派の元になります。
この臨済宗とは別の系統の曹洞宗を日本に伝えたのは道元です。道元は興聖寺、らに永平寺(福井県)を開き、只管打坐(ひたすら坐る)の禅の道場としました。
「心」の肯定
栄西も道元も、禅宗は本来、仏心宗と呼ぶべきだといいました。人の心には如来につながる仏性がある。そのことに気付けば、人は皆、仏である。さらに犬にも、庭の木も、仏のさとりが表れている。この「心」の教えは、今も日本人の人間観に生きています。
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本書では、成り立ちから現代まで、日本の宗教とそれに関する情報を幅広くご紹介。縄文から続く日本人の宗教と文化をたどる1冊となっています。『図解でわかる 14歳から知る日本人の宗教と文化』(山折哲雄・監修、インフォビジュアル研究所・著)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、ごみ問題、水資源、気候変動などのSDGsに関する課題や、地政学、資本主義、民主主義、心のケア、LGBTQ+などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。