2015年、一人の青年が他者による性的アイデンティティの暴露によって心身に不調をきたし死亡してしまうという悲しい事件が起こりました。この事件をきっかけに「アウティング」という言葉が日本でも知られるようになったのです。今回は、「アウティング」とは何なのか、何故してはいけないのかを一緒に考えましょう。
2021年9月に発売された『図解でわかる 14歳からのLGBTQ+』(社会応援ネットワーク)では、LGBTQ+に関わる詳しい用語解説と、2021年時点でのLGBTQ+を取り巻く社会についてをまとめた記事が満載です。ここでは、その一部を抜粋し、紹介していきます。(全6回)
A.それは、アウティングかもしれません。
カミングアウトという言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。例えば、「実はゲイなんだ」と友だちや親に言ったりすること、主に自分のセクシュアリティーを他の人に伝えることをカミングアウトといいます。
そして、その聞いたことを、話してくれた本人の承諾を取らずに、他の誰かに話してしまうことをアウティングといいます。アウティングされた当事者が、秘密にしていたセクシュアリティーが暴露されてしまったことを苦にして自死してしまう事件もおきました。「あの人ゲイなの?」というようなうわさ話が、人の命を奪ってしまうこともあるのです。
その人のためでもアウティングになります
当事者が誰かにカミングアウトしていたとしても、周囲みんなにしているとは限りません。例えば、担任の先生に伝えていたとしても、親には伝えていないかもしれません。ここで、先生が当事者に確認しないまま、その親に伝えてしまうと、善意からだったとしてもこれはアウティングになります。
また、カミングアウトしても周囲に必ず理解してもらえるわけではなく、親から拒絶されてしまう人も少なくありません。そして、約7割の当事者が、カミングアウトしやすい環境にはなっていない、と感じている現状があります。
このページのキーワード
【セクシュアル・マイノリティー】
性的少数者のこと。レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーなどを含む総称として使われることが多い。
【カミングアウト】
これまで伝えていなかった自分自身のセクシュアリティーを周囲に開示すること。
【アウティング】
本人の同意なく第三者にその人の性のあり方を暴露してしまうこと
【パートナーシップ制度】
戸籍上同性であるカップルに対して、2人がパートナーとして生活していることを自治体が証明する制度
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本書では他にも、LGBTQ+の考え方や当事者の方への接し方、彼らを取り巻く社会や世界の法律までを詳しくまとめています。『図解でわかる 14歳からのLGBTQ+』(社会応援ネットワーク・著)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、日本の宗教、ごみ問題、水資源、気候変動などのSDGsに関する課題や、地政学、資本主義、民主主義、心のケアなどなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
全国の小中学生向けの『子ども応援便り』編集室が、2011年東日本大震災時、「メッセージ号外」を発行したのを機に設立。同時に文部科学省等から委託を受け、被災地に「子どもの心のケア」の出張授業や教職員向けの動画配布を行う。以降、全国の4、5、6年生全員に『防災手帳』を無料配布するなど、学校現場からの「今、これが必要」の声に徹底して応えるプロジェクトを展開。心のケア、防災、共生社会、SDGsの出張授業や教材作り、情報発信を続ける。コロナ禍では、「こころの健康サポート部」を立ち上げた。書籍に『図解でわかる 14歳からのLGBTQ+』(太田出版)など。