観光で寺社仏閣に訪れると、「今のはお寺? それとも神社?」と迷うことはありませんか? 大きい場所だと、お寺の中に神社が建てられていたり、仏像を見て「神様」と呼んだり…実は、その感覚はあながち間違っていないのです。
2023年6月に発売された『図解でわかる 14歳から知る日本人の宗教と文化』(山折哲雄・監修、インフォビジュアル研究所・著)には、「信じる」より「感じる」、そんなゆるやかな宗教の時代へ向かう、日本の宗教とこれからについてまとめられた記事が満載。ここでは、その一部を抜粋し、紹介していきます。(全6回)
寺と神社の融合
『続日本紀』によると、天平勝宝元(749)年、八幡神が大仏造立を助けるといって九州宇佐の八幡宮の神官らが行列を演じて都に上り、平城京に八幡神社が建てられました。そこでは僧が神前で読経するようになりました。これが神仏習合の最初の出来事とされます。八幡神は八幡菩薩とよばれるようにもなります。
平安時代には、寺院に神がまつられました。比叡山の大山咋神(山王権現)、高野山の狩場明神は、それぞれの土地の守り神(地主神)で、そこに寺の建立を許し、守護神にもなりました。さらに、日本古来の神々は仏や菩薩が日本に適すように仮の姿をとったものだとする本地垂迹という考え方が広まりました。本地は元の仏や菩薩、垂迹は仮の姿の神々で、それを権現(権に現れたもの)といいます。代表的なのは熊野三社権現で、三社の本地は阿弥陀如来、薬師如来、千手観音とされます。そうして神社に僧が暮らして朝夕に神前でお経をあげるようになりました。
また、神社の境内に建てられた寺を宮寺、神宮寺などとよびました。平安時代末期から末法意識が強まると、和光同塵という考え方も加わります。これは、仏が光を和らげて塵ちりのような俗世に神として現れるとするもの。天照大神さえ、光の仏である大日如来の仮の姿だといわれるようになりました。さらに中国道教・儒教の「天」という概念も日本の仏と神々の世界に加わりました。その後、明治政府の神仏分離政策によって神社と寺院が分けられるようになるまで、日本では神も仏も一体だったのです。
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本書では、成り立ちから現代まで、日本の宗教とそれに関する情報を幅広くご紹介。縄文から続く日本人の宗教と文化をたどる1冊となっています。『図解でわかる 14歳から知る日本人の宗教と文化』(山折哲雄・監修、インフォビジュアル研究所・著)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、ごみ問題、水資源、気候変動などのSDGsに関する課題や、地政学、資本主義、民主主義、心のケア、LGBTQ+などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。