皆さんはご飯を残した子供に対して「世界中には食べられない子供だっているんだぞ!」と諭す大人を見たことはありませんか? 果たしてその人は、世界中で何人の子供が飢えに苦しんで、どれだけの食糧が無駄になっているか本当に知っているのでしょうか……。
『図解でわかる 14歳から知るごみゼロ社会』では、詳細なデータをもとに、現在世界が抱えるごみの問題について分かりやすく解説しています。
今回は「食品ロス」についての解説を一部ご紹介します。
先進国は調理ごみが少ない?
国連食糧農業機関(FAO)によれば、年間約13億トンもの食料が、世界中で捨てられています(2011年調べ)。これは、世界で生産される食料の約3分の1に当たる数字です。世界には、貧困や不作などによって食料不足に苦しむ人が約8億人もいるのに、大量の食料が廃棄されているのです。
このような食べ物の無駄を、日本では「食品ロス」とひとくくりに呼んでいますが、FAOは、次のように区別しています。
●食品ロス…生産・貯蔵・加工・輸送の段階で食べ物が損なわれること
●食品廃棄…小売店、飲食店、消費者の段階で食べ物が捨てられること
国連環境計画(UNEP)は、このうちの「食品廃棄」に的をしぼった報告書を2021年に発表しています。それによると、世界全体の食品廃棄は年間9億3,100万トンにのぼり、その内訳は家庭61%、飲食店26%、小売店13%という結果でした。
一般に、技術や設備が未熟な途上国では、食品ロスが多い傾向が見られます。一方、食べ物が豊富な先進国では食品廃棄が多いと考えられてきました。ところが、このUNEPの調査では、食品廃棄の量は、所得水準にあまり左右されないことがわかりました。理由のひとつは、途上国の家庭では、毎食、素材から調理しているため。かたや先進国では、下処理した食材や調理済み食品の利用が多いので、調理くずが出にくくなります。しかしこれは、消費者の代わりに、加工業者などが食品ごみの始末をしていることでもあるので、食品ロスと食品廃棄をトータルに見る必要があるでしょう。
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本書では、人々の文化の発展とごみの歴史、今考えるべきごみの問題、そしてこれからの課題についてわかりやすく解説しています。『図解でわかる 14歳から知るごみゼロ社会』(インフォビジュアル研究所)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。「図解でわかる14歳からの」シリーズは、現在第19弾まで刊行されている人気書籍です。ごみ問題のほか、水資源、気候変動などの環境課題、地政学、資本主義、宇宙開発、食料問題、LGBTQ+、防災などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。