テレビなどで「外来種問題」という言葉を聞いた人は多いと思います。その中に、どの生き物が外来種なのかを意識し、なぜ外来種の存在が問題なのかまで理解している人はどのくらいいるのでしょう。
10月に発売された『図解でわかる 14歳から知る生物多様性』(インフォビジュアル研究所)では、地球だけがもつ奇跡の多様性を守るために、今わたしたちが知るべきことを分かりやすく解説しています。ここでは、その一部を抜粋し、紹介していきます。
今回は、外来種がもたらす日本の生態系の危機について。
人間が持ちこんだ厄介者
生物多様性を脅かす原因のひとつは、外来種の侵略です。外来種とは、もともとの生息地とは違う地域に、人間によってもたらされた生物種をさします。
外来種には、ペットや観賞用、食用として持ちこまれるものだけでなく、乗り物や荷物に紛れて入りこむものもあります。これらの動植物のなかには、野生化してしまうと、もともとその地域に生息する在来種に被害を及ぼし、生態系を壊してしまうものがあり、侵略的外来種と呼ばれます。
日本では、各地の湖や池で、オオクチバスやブルーギルなどの外来魚が大繁殖し、大きな問題になっています。これらの外来魚は、釣り用に輸入され、放流されたものですが、在来種を食べてしまい、漁業の妨げにもなっています。
また、沖縄や奄美大島では、毒をもつハブを退治するために持ちこまれたマングースが、絶滅危惧種のアマミノクロウサギやヤンバルクイナなどの命を脅かしています。
このほか、ペットとして飼われ、逃げ出したり捨てられたりしたアライグマやアカミミガメ、食用や観賞用に持ちこまれたセイヨウタンポポやセイタカアワダチソウなどが、全国に広まって日本の生態系に悪影響を与えています。
日本では、外来生物法によって取り締まりを強化していますが、外来種が自然界に定着してしまうと、すべてを取り除くことは困難です。反対に、日本の生物が、外国で外来種として嫌われている例もあります。外来種問題は、各国が個別に規制するだけでなく、国際的な取り組みが必要でしょう。
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本書では、生物多様性の基礎知識や、生きものたちにしのび寄る危機、人類と生物の関係についてわかりやすく解説しています。『図解でわかる 14歳から知る生物多様性』(インフォビジュアル研究所)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、ごみ問題、水資源、気候変動などの環境課題、地政学、資本主義、民主主義、食料問題、LGBTQ+などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。