2020年以降大流行となった感染症。流行の緩和が見られる都度、政府が打ち出したのが全国旅行支援です。人々が旅行し、まちに観光客が増えることは、観光地だけでなくそこに関わるすべての人々の生活にとって重要なようです。
2023年6月に発売された『図解でわかる 14歳から学ぶこれからの観光』(社会応援ネットワーク)には、私たちの住む地域の文化や歴史、自然などを観光資源として認識し、発信していくための知識が満載。ここでは、その一部を抜粋し、紹介していきます。(全6回)
今回は、観光地に人が集まることの効果について。
まちに観光客が増えると、どんな効果があるの?
人は、観光することによって日常から離れてリフレッシュするだけでなく、さまざまな景色を見て感動を覚えたり、体験をして学びや知識を深めたりします。また人と交流することで協調性が養われ、時間やお金の大切さを学ぶこともできます。このように、日常の生活では決してできない経験が得られる観光ですが、同時に、周辺地域にも大きな効果を与えているのです。
観光には、旅館やホテルなどの宿泊施設や土産店のほか、テーマパークなどの観光施設、鉄道や航空機などの輸送業、そして旅行会社をはじめ各種観光ガイド業など、多くの産業が関わっています。観光客が増えることは、これらの産業の活性化につながり、経済効果が生まれることで、働く人々も元気になります。
また、観光関連施設だけにとどまらず、漁業や農業などの食材の生産や納入に関わる業種や、新たに施設がつくられる際には建設業やその関連業種、土産商品の製造業、各種サービス業といった、さまざまな周辺産業にもつながっています。特に最近では、日本を訪れる外国人旅行者が増え、私たちが日ごろ買っているような食品や薬、日用品の需要までもが高まっています。そのため、観光は「すそ野の広い産業」ともいわれています。
日本政府は、2007年から施行されている観光立国推進基本法に基づき、「住んでよし、訪れてよしの国づくり」という豊かな国民生活を実現するために、観光を21世紀の日本経済発展のための重要な産業と位置づけています。地域の人々が地元に誇りと愛着を持って、地域社会の持続可能な発展を目指すためにも、観光資源を整備し、観光客を誘致することがますます重要な課題となっています。
地域を元気にする観光振興
観光振興とは、地域のあらゆる産業と、地域で暮らす人々、役場や市役所などの行政が一体となって協力し、観光客に来てもらうしくみ(受け入れ体制)を地域全体で整えることです。
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本書では、観光に関する基礎知識から観光企画制作のアドバイスまで、観光に関わる情報を幅広くご紹介。中高生へのヒアリングをもとにした31個の質問から、「観光」をより身近に感じられる分かりやすい1冊となっています。『図解でわかる 14歳から学ぶこれからの観光』(社会応援ネットワーク)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、ごみ問題、気候変動などの環境課題の他、宗教や、資本主義、民主主義の歴史、心のケア、LGBTQ+など、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
全国の小中学生向けの『子ども応援便り』編集室が、2011年東日本大震災時、「メッセージ号外」を発行したのを機に設立。同時に文部科学省等から委託を受け、被災地に「子どもの心のケア」の出張授業や教職員向けの動画配布を行う。以降、全国の4、5、6年生全員に『防災手帳』を無料配布するなど、学校現場からの「今、これが必要」の声に徹底して応えるプロジェクトを展開。心のケア、防災、共生社会、SDGsの出張授業や教材作り、情報発信を続ける。コロナ禍では、「こころの健康サポート部」を立ち上げた。書籍に『図解でわかる 14歳からのLGBTQ+』(太田出版)など。